うさぎドロップ
FEEL COMICS。全9巻(番外編はまだ連載中らしい)。
いや、久々に、だ。素晴らしく愛おしい漫画に出会った。
どれ位愛おしいかというと、会社の同僚に全巻借りて読んだのにたまらなくなって全巻一括購入してしまった位、だ。
ネタバレする事は本意ではないのでここではあまり書かないけど、この漫画は一般的には芦田愛菜と松山ケンイチ主演の映画のイメージが強いと思う。幼い女の子(りんちゃん)を30の男がひょんな事からひきとって育てる話だ。
同じタイミングでフジテレビのノイタミナでもアニメ版が放映されていたから、それで知っている人もいるだろう。
しかし、この漫画の素晴らしいのは実は上記2作品で描かれている幼少期の物語ではない。高校生になったりんちゃんが登場する後半からだ(恐らく、多くの人の異論はないだろう)。
それまでの「子育て奮闘」漫画から一変する。あまり書かないけど。
そしてこの漫画の何がいいって、嘘っぽい演出がない所だ。
この漫画の主人公、りんちゃんは、設定的には悲劇的な出生だ。親に死に別れ、親族誰もが引き取りたがらず、天涯孤独の身になる所を拾われる。
そうしたそもそもの悲しみの出発点がありながらも、この漫画にはそうした悲劇を露骨に感じさせる演出がほとんど登場しない。能天気といってもいい位だ。
ただ単純に子供を育てるという事と、子供に育てられるという事と、周囲の人々の温かさへの感謝とそこはかとない喜び。
特に幼少期に顕著だが、大袈裟なエピソードはほぼ皆無。淡々と温かくて平和な日常が続いて行く。それが凄くいい。
勿論、要所要所でふとした悲しみを感じさせるところはある。でも、それは一切説明しない。行間や登場人物のふとした台詞、表情でちょっと感じさせるだけだ。
これが、ですね。今の漫画にはなかなか出来ないんじゃないですかね。どこぞの海賊漫画みたいに強迫観念的に押し付けがましい説明口調の愛だ正義だ友情だという事もなく、「感じさせる」。
いやー、女性作家だからなのかもしれないけど、こうした機微って、いいですねー。
で、淡々と、平々凡々と続く幼少期編から一変、上述した通り高校生編ではそれまでの「だらっと」した空気から一変。劇的な展開を見せる。
最後の終わり方はきっと賛否両論なのだろうし、個人的には許せるけど、許せない人の気持ちも、分る。何となく、違和感は残る。確かに。
まあ、ですね。とにかくですね。買いですよ。絶対面白い。特に後半。
そして、何ともまあ愛おしい。この世界観そのものが愛おしい。絵の温かさもあるのかしらね。
そしてまた、りんちゃんがいい女すぎる。これはもう、惚れるしかないレベル。
女性がこれを読んでどう思うかは分りませんが、30前後の男には間違いなくお勧めです。色んな意味で、身もだえる事間違いないです。